建築作品シリーズ 教育施設編について
一級建築士勉強用イラストとして、「建築作品シリーズ教育施設編」を制作しました。
全13事例。
この建築作品シリーズ教育施設編は、一級建築士の育成を行う受験サイト「教育的ウラ指導」を運営している、荘司 和樹(しょうじ かずき)さんの「建築作品シリーズ教育施設編」とコラボして制作したイラストです。
教育施設関連の建築事例は、製図試験においても、
(H28)子ども・子育て支援センター
(H25)大学のセミナーハウス
(H19)子育て支援施設のあるコミュニティセンター
(H17)防災学習のできるコミュニティ施設
など、教育に関連した課題も多く出題されています。教育施設の作品事例は、製図試験にもつながると考え、積極的に学んでほしいと思います。
各作品の詳細については下記のサイトに荘司さんの解説が掲載されているので、ぜひ参考にしてください。
八幡浜市立日土小学校
日本を代表する木造モダニズム建築と保存再生事例の代表作
戦後の木造建築としては、初の重要文化財指定を受けた木造モダニズム建築の小学校。
東校舎と中校舎(イラストの緑色の屋根の校舎)は切妻屋根の2階建てで、木造を主体に鉄筋ブレースや鉄骨トラス梁など取り入れたハイブリット構造となっており、川側の外壁は、構造本体から切り離したカーテンウォール方式となっています。
保存再生の作品としての一面もある日土小学校は、近年の出題傾向にとっても、重要な作品のひとつです。
ちなみに、日土小学校の特徴のひとつである川に突き出たベランダやテラス。その川の名前は、木が喜ぶと描いて「喜木川」。再生された木造建築にぴったりな川の名前だと思います。
設計者である松村氏の思いが伝わるよう、この学校の特徴的である川に突き出たテラスやベランダをイラストにしたかったので、喜木川越しに見える日土小学校を選びました。イラストは、その作品の特徴が伝わるような構図を見つけながら制作しています。
加藤学園暁秀初等学校
日本初のオープンスクール方式を取り入れた「カベのない学園」
加藤学園暁秀初等学校は、オープンスクールの例として出題されています。H18年の問題において、学習センターを中心に、16m×16mのオープンクラスルームと特別教室を中庭を介して配置された建築的な特徴で出題されています。
※16m×16m(256㎡)という大きなスペースは、一般的な教室の広さ7m×9m=63㎡の約4倍です。
オープンスクールとは、教育目的に応じて柔軟な教育活動が展開できるように、間仕切りをなくすなど開放的な計画された学校運営方式のひとつです。
特徴的な16×16mのオープンクラスルームと、本館屋上のルーフガーデンが伝わるような構図を選んでいます。ちなみに、立地が静岡県沼津市なのでイラストに富士山を入れようかと思っていたのですが、選んだ角度では富士山が見えなかったのでボツになりました。
東浦町立緒川小学校
オープンスペース型の公立小学校の先駆けとなった小学校
東浦町立緒川小学校は、オープンスペース型の公立小学校の先駆けとして知られている。普通教室、特別教室などの間仕切りが天井吊りの可動パネルとし、複数の教師によるチームティーチングなど柔軟に対応しやすいように計画されている。
エントランスから望んで、手前の1階建ての低学年棟、その奥に2階建ての高学年棟が配置され、中央の廊下を挟んで特別教室や体育館、管理棟が配置されている。
2階建ての高学年棟と、1階建ての低学年の立体的な差や、管理、特別教室棟などの配置がわかるよう、棟全体を俯瞰できるような構図を選びました。アクセントになっている屋根の小豆色を作るのに苦労しました。
宮代町立笠原小学校
1.5倍のクラスルーム床面積をもつ、竜宮城のような小学校
淡いピンクの顔料を含むRC躯体がひときわ目を引く、宮代町立笠原小学校は「教室重視」「クラスルーム独立」型の小学校として知られています。
クラスルームの床面積が約90㎡と、一般的なクラスルームの床面積7m×9m=63㎡程度の1.5倍の広さがあり、畳コーナーや、ベンチなどのあるアルコーブを設けてあるのが特徴的です。アルコーブとは、部屋や廊下など、壁面の一部を後退させてつくったくぼみ状の部分(凹室)のこと。
小学校の隣を流れる川は「姫宮落川」。なんとなく竜宮城を連想させる名前です。
竜宮城に例えられる笠原小学校。淡いピンク色の外壁と、開放的な空間を生み出すように外とつながる階段などの特徴が伝わる構図を選んでいます。平面的にも特徴があるので、平面図のイラストも添えました。緑も多くて自然との距離の近さを感じます。
目黒区立宮前小学校
敷地内6mの高低差を生かしたオープンスクール方式の小学校
目黒区立宮前小学校は、オープンスクール方式を採用した小学校です。
敷地内に6mの高低差があり、1階にモールを配置し、その吹き抜けに面して2階にクラスルームとオープンスペース、メディアスペースを組み合わせたユニットを配置。そのユニットを低学年、中学年、高学年ごとに計画されています。
宮前小学校の特徴である敷地内の6mの高低差を校舎の絵だけでは、伝えにくかったので、高低差を強調するような図を追加しています。絵だけにこだわらず、伝わる、ことに重点をおいてイラスト化しています。背景のビル群は、立地条件がビルがある都会であることをイメージできるように添えました。
旧浪合村立浪合学校
ハシロウカでつながる、小中学校が併設された教育文化施設
現在の長野県阿智村(旧浪合村)にある、浪合村立浪合学校。中央に本館、手前に小学校、東側には中学校が配置され、西側に隣接する保育園とあわせて一体的に建築されています。本館、小学校、中学校はハシロウカ(走廊下)と呼ばれる空中歩廊で結ばれています。公民館も併設されており、浪合学校が、一つの学校ではなく、街の教育文化施設の中心であることを物語っています。
浪(なみ)は、「なみ(波)」。合は、「あつまる、かさなる」という意味をもちます。浪合という地区は、四方を1,000m級の山々に囲まれた谷間の村です。地名が、大きな波のような山々が、集まり、重なる地形を連想させます。市町村合併など多くの地名が変わっていますが、古い地名にはその土地の特徴を表す文字を当てられることが多いので、地名にもその建築作品を連想させる要素があります。
浪合”小”学校、浪合”中”学校でもなく浪合”学校”と表記されているのも平面構成のヒントになると思います。
浪合学校の特徴はなんといってもハシロウカ。このハシロウカでつながる平面構成を伝えたかったので、平面のイラストを添えています。平面から保育園、小学校、中学校がまとまって配置されているのが分かります。また、山間部であることを連想できるように、背景には山々のイメージを取り入れました。
千葉県立打瀬小学校
幕張ベイタウンに計画された、オープンスクール形式の小学校
千葉市立打瀬小学校は、幕張ベイタウンに新設されたオープンスクール形式を採用した小学校。クラスルーム、ワークスペース、アルコーブ、中庭をひとまとまりにした空間を低、中、高学年ごとに異なるかたちで配置され、多様な学習展開に対応できるように計画されています。
小学校のグラウンドが周囲の公園(打瀬第一公園)と連続的につながり、広場やテラスなども配置されています。
幕張ベイタウンは、壁面線の位置、高さ、壁面立、三層構造などについて「都市デザインガイドライン」に沿って設計された集合住宅団地の事例としても出題されています。千葉市立打瀬小学校の近くには、千葉市立海浜打瀬小学校、千葉市立美浜打瀬小学校もあるので混合しないように注意してください。
打瀬小学校の特徴的なシルエットをかたちづくるアリーナを中心としたを構図にしました。都市のイメージを含ませるように、背景にビル群を取り入れています。
棚倉町立社川小学校
中庭を巡るスロープでつながる、自然の地形を生かした里山の小学校
棚倉町立社川小学校は、クラスルーム、オープンスペース及びテラス等を、低、中、高学年ごとにまとめたユニットとし、各ユニット、多目的ホール及び屋外劇場を、中庭を巡るスロープで結ばれています。中庭の高低差を生かして野外劇場が設けられています。
森や池などが隣接しており、ビオトープも計画され、自然と触れ合えるような機会を得ることができる小学校です。
構造は鉄筋コンクリー造と木造が用いられ、棟ごとに様々な形状の屋根が展開されています。
中庭を巡るスロープが伝わるよう平面図を描きました。屋外劇場の階段のイラストは、高低差があることを表現しています。社川小学校は自然をたくみに取り入れているので、背景の山並みは豊かな里山をイメージしています。
福岡市立博多小学校
4つの小学校が統合され生まれた、オープンプラン型の小学校
福岡市立博多小学校は、冷泉小学校、奈良屋小学校、御供所小学校、大浜小学校の4つの小学校を統合し生まれた、オープンプラン型を採用した小学校。壁のない教員コーナーやワーキングスペースが設けられ、複数の教員で児童を見守ることのできる空間を作り出しています。
地上5階、地下1階の鉄筋コンクリート造。「まちは学校、学校はまち」をコンセプトに、敷地に小学校、幼稚園、公民館を同時に新築し、一体的に計画されています。
立体的に広がる博多小学校。立体感が伝わるように5階建ての校舎を正とした構図にして、学校と周囲と、内と外をつなぐ「立体街路」を強調するようなイラストにしています。
愛知県児童総合センター
チャレンジタワーがシンボルの”あそびの基地”
愛知県児童総合センターは、チャレンジタワーと呼ばれる吹抜け空間を中心に、様々な諸室を配置された児童施設。創作活動諸室、体験諸室、幼児コーナなどの施設が配置され、子どもが五感を使って遊び学べるよう計画されています。
イラストの右側に描いた、チャレンジタワーを囲むレイアトリウムゾーン。タワー自体が遊具となっており、タワーの一番上には展望フロア。360度のパノラマが広がります。
人々のアイコンはイラスの中では、賑やかなイメージを表しています。シンボリックなチャレンジタワーを中心に大人も子どもワクワクするような空間イメージをイラスト化しています。
公立はこだて未来大学
スタジオをひな壇状に設けた、プレキャスト・コンクリート構造の大学
公立はこだて未来大学は、大きなワンボックスの空間に、機能を特定しないスタジオをひな壇状に設けた情報系の大学です。各研究室やスタジオは、活動の様子がうかがえるように透明なガラスで仕切られコミュニケーションの活発化を促している。
施工には、プレキャスト・コンクリートが多用されています。プレキャスト・コンクリート工法は、工事で、“あらかじめ(プレ)成形する(キャスト)”されたコンクリートを現地へ運搬し、組み立てる工法で、工事期間の短縮が図れます。
白と青と緑の配色と、枠いっぱいの横長の背景で北海道の自然、スケール感をイメージしています。略称FUN.(Future University Hakodate)をアクセントとして付け加えました。
立命館大学いばらきキャンパス
ビール工場跡地に、官民連携が連携し描かれたキャンパス
立命館大学大阪いばらきキャンパスは、ビール工場跡地工場跡地に建てられた、官民が連携し開設された立命館大学の4つ目のキャンパスです。
東西に走る市民交流軸と、南北に走る学びの軸。2つの軸により分けられた4つのエリアに、学舎、スポーツ、公園、市街地整備を配置した構成となっており、防災公園(岩倉公園)と一体的に計画されています。
正面に見えるA棟は「学びの軸」と水平に配置されており、イラスト手前のシンボルプロムナードから、奥側へ向かう市民交流軸と直行しています。2つの軸が感じ取れるような構図を選んでいます。また、特徴の一つであるキャンパスと一体的に計画された防災公園もイラストに織り込んでいます。
ふじようちえん
自由に走り回れる円環状のウッドデッキある幼稚園
ふじようちえんは、屋上の円環状のウッドデッキが特徴的。楕円形のウッドデッキはこどもが自由に走り回れる運動場のように広がっています。ウッドデッキ以外にもツリーハウスやスマイルファームなど子どもが体験を通して学べる空間をたくさん備えた幼稚園です。
構造は鉄骨造平屋。内部は間仕切り壁が少なく引き戸を多用し屋外とつながる広々空間。
ウッドデッキに人々のアイコンを配置しているのは、屋上のウッドデッキは巨大な遊具の一つであることを伝えています。シンプルな構成でイラスト化しやすい建築作品。覚えやすいと思います。
まとめ
さいごに
学校の建築作品は、イラスト化をする上で、写真などの資料が少なかったので、図書館へ出向いたり、地図でみたりしながら資料を集め、どうやったらその建築作品の特徴を表現できるかとても悩みました。
建築士試験で問われる作品は、外観が特徴的な作品が多く、描くのが難しいものも多いですが、構図は選びやすいものが多いです。一方で、学校建築はやはり学校なので、色合いや外観が似てるものもあり、それぞれを差別化するために、ひとつひとつのイラストの構成や配置を変化させながら、同じ印象にならないように工夫をしています。
近年の学科計画の建築作品問題は、とてもむずかしいので、受験生は苦手意識もっているの方も多いはずです。建築作品は、写真で覚えようとすると情報量が多く、文字だけではイメージしにくい。BANKO氏のイラストは、写真と文字の間を埋められるよう、抽象化した図と特徴を表すワードをセットにした作品を制作しています。試験勉強のお役に立てれば幸いです。
テキストを読みながら、過去問を解きながら、テキストやノートの端っこに、すらすらと落書きしながら覚えられるような勉強法がおすすめです。
本企画を提案及びたくさんのご協力を頂いた荘司先生に感謝申し上げます。