一級建築士過去問、計画H27-02のイラストを制作しました。
どんな問題？
日本を代表するお茶の文化。その舞台となった茶室。一級建築士試験では、その茶室の建築作品についても出題されています。少しマニアックな問題ですが、日本の伝統と建築について学べる機会なので、イラストを通して学びましょう。
妙喜庵待庵 みょうきあんたいあん
千利休の作と使えられる国宝の草庵茶室
京都都府大山崎町にある国宝、妙喜庵待庵。現存する最古の草庵茶室と呼ばれています。小さな躙口（にじりぐち）から入る、二畳という茶の湯のための小さな侘の空間。千利休の作とも伝えられています。
京都府大山崎町には、妙喜庵待庵の他にも、藤井厚二設計の聴竹居、ウイスキーで有名なサントリー山崎蒸溜所、アサヒビール大山崎山荘美術館など建築作品や観光名所もあり、散策にぴったりです。いずれもJR大山崎駅から歩いていける範囲にあります。
茶室建築作品は、茶の湯のための空間づくりのため、イラストにも平面図を多く入れています。外観だけのイメージでは区別が難しい作品も、平面図とセットで覚えるとそれぞれの特徴がつかみやすくなります。
密庵 みったん
大徳寺龍光院の書院の一角に設けられた国宝の書院風茶室
大徳寺龍光院の書院に隣接した四畳半台目の国宝茶室密庵。数寄屋風のつくりと書院造の意匠を基調とした書院風茶室の代表例で、小堀遠州の作と伝えられています。四畳半台目とは、四畳半＋台目畳（一畳の約3/4のサイズ）で構成されたスペースです。
密庵のある龍光院は、京都府京都市北区紫野にある臨済宗の寺院。初代筑前福岡藩主の黒田長政が父、黒田孝高（官兵衛・如水）の菩提を弔うために建立されました。非公開の寺院で、特別公開なども行われていないので拝観することは難しい国宝です。
密庵のある大徳寺龍光院は非公開のため、イラストの資料もなかなか見つからず悩みました。秘密に包まれた茶室、”密”庵です。
笑意軒 しょういけん
笑意軒は、桂離宮庭園の南端近くにあります。茅葺き寄棟屋根や深い土庇が特徴的な農家風の外観をもった茶室です。笑意軒という名は李白の『山中問答歌』の句に由来するといわれています。土庇（どびさし）は、数寄屋造りなどでみられる、地面に柱を立て、深く張り出させた庇のことです。
桂離宮の庭園内には、「笑意軒」を含めて「松琴亭」、「賞花亭」、「月波桜」の4つの茶室があり、笑意軒は夏の涼を楽しむための茶室とされています。
とてもユニークな名前の笑意軒。農家風の外観をイメージした緑を基調としたイラストにしました。アイコニックなイラストに仕上がったお気に入りの作品の一つです。
如庵 じょあん
京都の建仁寺から犬山市へ、織田信長の弟が造立した国宝茶室
国宝の茶室は日本に3つ。「待庵」、「密庵」、そしてこの「如庵」です。如庵は、京都、建仁寺の塔頭、正伝院内に建てられ、現在は愛知県犬山市にある名鉄犬山ホテルの敷地内に移築されています。大小5つの窓や躙口（にじりぐち）が特徴的です。
京都建仁寺から、東京の三井家本邸、神奈川県大磯町の三井家別邸、そして名古屋の犬山市へ時代とともに各地を渡るという数奇な茶室です。。織田有楽斎はあの織田信長の弟とされており、「じょあん」は有楽斎のクリスチャンネームJoanが由来ともいわれています。
妙喜庵待庵とイメージがかぶらないよう、紅葉のイラストを追加しました。イラストで学ぶためには、同じ印象にならないように構図や配色を少しずつ変化させています。
孤篷庵忘筌 こほうあんぼうせん
障子下の開口が特徴的な小堀遠州作の12畳の書院風茶室
大徳寺の塔頭孤篷庵に設けられた忘筌席。孤篷庵忘筌は、小堀遠州の作とされています。小堀遠州は、大名茶の完成者として、安土桃山時代から江戸時時代前期にかけて活躍しました。孤篷庵は1793年に焼失しましたが、松江の大名である松平不昧（ふまい）が遠州の設計図をもとに復元。
縁先に渡した中敷居の上の障子を半分降ろし、下が吹き抜けになった開口から庭園を望む空間が特徴的です。
孤篷庵忘筌の特徴は、障子の下の開口と庭園。そのイメージを伝えるために右側のイラストを追加しました。20220年6月、この記事を書いているタイミングでなんと特別公開があるとのこと、これはぜひいかねば。
まとめ
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日本伝統の茶の文化を生んだ茶室。試験問題は様々なテーマやメッセージをもって出題されていると考えると、すべて茶室で構成されたこの問題は、日本の文化や伝統を学んだ建築士になってほしいというメッセージかもしれません。そんな想像をしながら問題を解くことも勉強を楽しむ要素のひとつだと思います。
